PCB汚染物質は人体への悪影響が大きいこともあり、法律で定められた通りに適切な処理が求められます。しかしPCBの分類が複雑であるため、事業者によっては処理の方法がわからない場合もあるのではないでしょうか。この記事では、PCB汚染物の概要や具体例、処理の際に必要な届出について紹介します。PCB廃棄物の適正な保管方法や処理方法についても解説するため、参考にしてください。
PCB汚染物の概要
PCBを適切に処理するためにも、まずは概要を掴んでおきましょう。ここでは、PCBの危険性やダイオキシンとの関係、種類について解説します。
PCBとは
PCBはPoly Chlorinated Biphenyl(ポリ塩化ビフェニル)の略称です。また、ポリ塩化ビフェニル化合物の総称でもあります。
分子内に存在する塩素の数や位置の違いにより、209種類の異性体が存在するともいわれます。PCBの性質は次のとおりです。
- 溶けにくい
- 沸点が高い
- 熱で分解しにくい
- 不燃性
- 電気絶縁性が高い
化学的にも安定しやすかったため、以前は電気機器の絶縁油や熱交換器の熱媒体、ノンカーボン紙などのさまざまな用途で利用されていました。しかし現在では、人体や環境への影響を考慮して、PCBの製造・輸入は禁止されています。
PCBの危険性
PCBは脂肪に溶けやすいことから、人体に取り込まれやすい性質があります。そのため少しずつ体内に蓄積して、さまざまな症状を引き起こす点が特徴です。PCBの影響で人体に現れる症状は、たとえば次のとおりです。
- 吹出物
- 肌の色素沈着
- 目やに
- 全身倦怠感
- しびれ感
- 食欲不振
PCBによる症状が現れると、改善するまでに長期間を要するといわれています。
PCBとダイオキシン類の関係
PCBのなかでも、コプラナーPCBと呼ばれる物質は高い毒性を示し、ダイオキシン類として定義されます。コプラナーとは共平面状構造を意味し、化学記号で表現すると同一平面上にない構造をしている点が特徴です。
コプラナーPCB以外にも、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)やポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDD)がダイオキシン類に含まれます。
PCB汚染物質の種類
PCB汚染物質には、「廃PCBなど」と「PCB汚染物」、「PCB処理物」の3種類があります。
廃PCBなどに該当する汚染物質は、廃PCBやPCBを含む廃油です。PCB汚染物には、PCBを一定の量以上を含む、泥状や固形状のものなどが該当します。また、PCB処理物は処理した後に一定の基準に満たないものが分類されます。それぞれについて具体例を示すと、以下の表のとおりです。
汚染物質名 | 具体例 |
廃PCBなど |
|
PCB汚染物 |
|
PCB処理物 | 廃PCBなどやPCB汚染物を処分するために処理を施したが、環境省令で定める基準に不適合だったもの |
PCB汚染物の具体例
PCB汚染物は高濃度と低濃度に分類されます。それぞれについて、具体的な汚染物を示しながら解説します。
高濃度PCB廃棄物
PCB濃度が5,000mg/kgを超える場合は高濃度PCB廃棄物に分類されます。ただし可燃性の汚染物などは、PCB濃度が100,000mg/kgを超える場合に高濃度PCB廃棄物に該当します。
高濃度PCB廃棄物に該当するものは、主に次のとおりです。
- 高圧変圧器・コンデンサー等
- 安定器等
- 可燃性のPCB汚染物(100,000mg/kg超)
- 不燃性のPCB汚染物(5,000mg/kg超)
高濃度廃棄物は、中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)で処分する必要があります。
低濃度PCB廃棄物
PCB濃度が5,000mg/kg未満の場合は低濃度PCB廃棄物に分類されます。低濃度PCB廃棄物には、主に次のものが該当します。
- 微量のPCBに汚染された廃電気機器など
- 可燃性のPCB汚染物など(100,000mg/kg以下)
- 不燃性のPCB汚染物など(5,000mg/kg以下)
低濃度PCB廃棄物は無害化処理認定施設やPCBに関する特別管理産業廃棄物処理の許可を受けた施設での処分が可能です。
北海道の「燃え殻・ばいじん・鉱さい(廃サンドブラスト)・無機性汚泥」に特化した産廃処理会社!お問い合わせはこちらからPCB汚染物の処理で必要な届出
PCB汚染物を処理するためには、PCB特別措置法に沿った届出やJESCOへの登録が必要です。それぞれについて解説します。
PCB特別措置法に沿った届出が必要
PCB汚染物の保管や処分の状況について、毎年6月末までに都道府県の知事への届出が必要です。届出先は、政令で定められた市長が該当する場合もあります。届出書には次の事項を記載します。
- 廃棄物の種類
- 製品の種類
- 廃棄物の型式
- 処分予定の年月日
- 廃棄物の量
- 保管の条項
高濃度PCB廃棄物の処理はJESCOへの登録が必要
高濃度PCBを使用した変圧器やコンデンサー、蛍光灯の安定器を処分する場合はJESCOに処理を依頼する必要があります。PCB特別措置法による届出とは別に、JESCOへの事前登録(無料)が必要です。
JESCOはPCB廃棄物の処理事業を行う政府が全額出資をする特殊会社です。国の監督下にあり、全国5箇所にPCB廃棄物の処理施設が設置されています。保管事業者から委託を受けてPCB廃棄物の処理事業を行っています。
北海道の「燃え殻・ばいじん・鉱さい(廃サンドブラスト)・無機性汚泥」に特化した産廃処理会社!お問い合わせはこちらからPCB汚染物を保管する際のポイント
PCB汚染物を保管する際のポイントは次のとおりです。
- PCB汚染物質であることを明記する
- 適切な場所に保管する
- 漏れを防止する
各項目を参考にして、適切に保管するようにしましょう。
PCB汚染物質であることを明記する
PCB廃棄物であることを示すラベルを保管容器に貼付して、誤廃棄を防ぎましょう。廃棄物の種類や管理者氏名、名称、連絡先を表示した掲示板を近くに設置することもおすすめです。
適切な場所に保管する
PCB廃棄物は屋根のある場所で保管する必要があります。また紛失防止のため、PCB廃棄物以外の物と一緒に保管しないようにしましょう。高温多湿は避け、雨漏りなどにも注意してください。
地下への浸透を防止する観点から、ひび割れや継ぎ目のないコンクリート床上や樹脂コーティング床上で保管することが大切です。トランスなどは、鋼製容器やオイルパンに収納するようにしましょう。
漏れを防止する
PCB廃棄物が入った容器の転倒防止のため、別の容器に収納したり、保管容器をロープで固定したりして容易に倒れないようにしましょう。また腐食により漏れる可能性がある場合は、金属製の容器で保管するなどの流出防止の措置を施すことが大切です。
蓋つきの金属容器に入れたり、受け皿などを敷いたりして、高温を避けて保管するとよいでしょう。さらに保管容器内にパッキング材を詰めると、漏れ防止になります。
北海道の「燃え殻・ばいじん・鉱さい(廃サンドブラスト)・無機性汚泥」に特化した産廃処理会社!お問い合わせはこちらからPCB汚染物質の処理方法
PCB廃棄物はPCBが付着した機械部品などのPCB汚染物や、絶縁油などの廃PCBに分けて処理されます。機械部品などに付着したPCBは、溶剤洗浄や真空加熱を利用した分離装置などによりPCBが分離・回収されます。その後、前処理で抜き取った廃PCBとともに、化学処理で無害化されます。
PCBを化学処理する方法
PCBを化学処理する方法は次のとおりです。
化学処理の方法 | 概要 |
脱塩素化分解 | PCBの分子を構成する塩素をアルカリ剤などと反応させることで、PCB中の塩素を水素などに置き換える方法 |
水熱酸化分解 | 超臨界水(温度と圧力を調整して反応性を高めた、液体でも気体でもない水)または超臨界水に近い水でPCBを塩、水、炭酸ガスに分解する方法 |
還元的熱化学分解 | 還元雰囲気の中で熱化学反応によりPCBを塩と燃料ガスに分解する方法 |
光分解 | 紫外線を利用してPCBに含まれる塩素を除去し、PCBを分解する方法 |
プラズマ分解 | アルゴンガスなどのプラズマ(高電離ガス分子)によりPCBを炭酸ガス、塩化水素などに分解する方法 |
まとめ
PCBは「廃PCBなど」や「PCB汚染物」、「PCB処理物」に分類され、それぞれ法律で決められた方法に従って適切に処理する必要があります。またPCBの漏れを防ぐためにも、適切に保管することが大切です。
北海サンド工業では、通常は埋め立てになってしまうような燃え殻やばいじん、鉱さいのリサイクルが可能です。また、北海道で最初に鉱さいの中間処理の許可を取得しました。汚泥をリサイクルして改良土として処理できる点も特徴です。建設廃棄物の処理について迷った場合は、北海サンド工業にご相談ください。