バイオマス発電は、動植物や産廃物などを燃焼したりガス化したりすることで発電する方式です。資源を再利用するため循環型社会を構築でき、地域活性化や廃棄物量の削減なども実現します。本記事では、バイオマス発電の基礎知識や現状、課題、産業廃棄物処理の方法などを解説します。バイオマス発電について知りたいなら、ぜひ参考にしてください。
バイオマス発電の現状と目標
最初にバイオマス発電の概要と日本国内の普及状況、今後の目標などを下記にて詳しく解説します。
バイオマス発電とは
そもそも「バイオマス」とは動植物などから生まれた生物資源の総称のことで、「バイオマス発電」とは動植物などに由来する生物資源を直接燃焼したり、ガス化し燃料にしたりすることで発電する方式のことです。
日本政府は2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。この脱炭素社会を実現させるために、太陽光、風力、地熱、中小水力、バイオマスといった5種類の再生可能エネルギーの普及割合を、バランス良く拡大させる方針も固めています。
再生可能エネルギーのなかでも、太陽光・水力・風力・地熱などの自然エネルギーは、発電効率が天候によって左右されます。一方バイオマス発電は、燃料となるバイオマスを供給することで安定した発電が可能です。
これまで棄てられるだけだった廃棄物や家畜の排泄物、木材などを燃料として再利用することで循環型社会の構築を目指すことができ、地域活性化や廃棄物量の削減などのメリットもあります。
※参考:カーボンニュートラルとは|環境省脱炭素ポータル
※参考:再生可能エネルギーとは|資源エネルギー庁
バイオマス発電の種類
バイオマスには、木質系、農業・畜産・水産系、建築廃材系、食品産業系、製紙工場系、生活系などの生活資源が含まれます。これらが燃やされる燃料とその燃焼方法によって、バイオマス発電は3つに分類できます。それぞれ下記にて詳しく解説します。
直接燃焼方式
「直接燃焼方式」とは、バイオマスを直接燃焼し、そこから発生した水蒸気で蒸気タービンを回転させて発電を行う方式のことです。可燃性ゴミや木くず・間伐材、精製した廃油などを燃料として使い、木くずなどは木質ペレットという固形状の燃焼物に、間伐材などは粉砕して木質チップなどに加工します。これにより、燃焼効率やエネルギー変換効率が上がり、輸送もしやすくなります。
熱分解ガス化方式
「熱分解ガス化方式」は、バイオマスを直接燃焼するのではなく高温で熱し、そこで生じたガスでガスタービンを回し発電する方法です。この方式も、可燃性ゴミや木くず・間伐材などを燃料とします。
生物化学的ガス化方式
「生物化学的ガス化方式」は、家畜の糞尿や生ゴミ、下水汚泥などのバイオマスを発酵させることでガスを発生させ、ガスタービンを回して発電します。
日本のバイオマス発電の現状と今後の目標
isep(環境エネルギー政策研究所)「2020年の自然エネルギー電力の割合(暦年速報)」によると、2020年度の日本における再生可能エネルギー割合は、前年から約2ポイント増となる20.8%と推計されています。そのうちバイオマス発電は3.2%で前年に比べ約2割増加しているものの、「第5次エネルギー基本計画」で掲げる再エネ全体で22~24%、バイオマス発電が3.7〜4.6%という目標には、ほど遠い結果に留まっています。
また2022年4月にまとめられた「今後の再生可能エネルギー政策について」によると、国は「第6次エネルギー基本計画」でさらに目標値を上げており、2030年までに再エネ全体の割合を36〜38%、バイオマス発電を5%程度として検討しています。
政府は高い目標を掲げているものの、実際はなかなか普及していないのが現状です。
※参考:2020年の自然エネルギー電力の割合(暦年速報)|isep
※参考:新しくなった「エネルギー基本計画」、2050年に向けたエネルギー政策とは?|資源エネルギー庁
※参考:今後の再生可能エネルギー政策について|資源エネルギー庁
バイオマス発電が求められている背景
バイオマス発電の普及が進んでいないとはいえ、バイオマス発電が求められている背景には下記の理由があります。詳しく解説します。
温室効果ガス削減に発電が必要
気候変動や異常気象をもたらす地球温暖化の要因である温室効果ガスの対策を行うには、発電による二酸化炭素の排出を抑制することも重要です。そのため、現在主力である火力発電の代わりとなるエネルギーが求められ、バイオマス発電などの再生可能エネルギーが注目されるようになりました。
CO2を排出しないエコな電源
木材によるバイオマス発電は成長過程において光合成によりCO2を吸収するため、CO2排出量が実質ゼロになると考えられています。2050年ゼロカーボン社会の実現が進められ、再生可能エネルギー利用のトレンドが世に浸透していくなかで、バイオマス発電や太陽光発電が求められています。
参考:知っておきたいエネルギーの基礎用語~地域のさまざまなモノが資源になる「バイオマス・エネルギー」|資源エネルギー庁
RE100の推進
環境省は自社事業の使用電力を100%再生エネルギーでまかなう取り組みである「RE100」を推進しており、2030年までの達成を目標としています。すべての地方環境事務所(北海道、東北、関東、中部、近畿、中国四国、九州)管内で、再エネ100%の電力調達に向けた取り組みを開始するなどのアクションを推進しており、その主役がバイオマス発電や太陽光発電です。
※参考:環境省RE100の取組|環境省
循環型社会の構築・地域活性化
バイオマス発電では、木質系、農業・畜産・水産系、建築廃材系、食品産業系、製紙工場系、生活系といった廃棄物を資源として活用するため、廃棄物ゼロを目指す循環型社会の構築を実現します。また、間伐材や家畜の排泄物のような資源をエネルギーとして利活用できれば、エネルギー関連の新しい産業を地域にうみ出すことができ、地域活性化につながります。
バイオマス発電の課題
2030年のバイオマス発電の割合目標が5%程度まで引き上げられる見通しであるにも関わらず、現状ではあまり普及していません。なぜバイオマス発電が広がらないのか、その理由や課題を下記にて詳しく解説します。
資源の国外依存率の高さ
国内木質燃料の間伐材は、「森林・林業基本計画」により利用できる木材量に制限があります。一般木材等・バイオマス液体燃料においては、原料の7割以上がパーム油やPKSといった輸入材を活用しており、国外への依存率が高い状況です。バイオマス発電を拡大するなら、国内外の原料の安定確保や持続可能性を考慮する必要があります。
また、ベトナムの大手商社が販売した木質ペレットで虚偽表示を行っていた不正も起こっており、取引をしていた日本企業が対応に追われました。こうした国際認定の偽造など、新たな問題も顕在化してきています。
参考:FIT制度の支援の前提となる持続可能性第三者認証確認等について|経済産業省
参考:再エネ業界に激震、バイオマス燃料で「認証偽装」|東洋経済ONLINE
バイオマス燃料の枯渇
新型コロナウィルスの影響でヤシガラ燃料の製造ができない東南アジアなど燃料供給側の問題や、バイオマス乱立による需要過多、伐採と植樹を対で実施していない不正などによるバイオマス燃料の枯渇も課題となっています。今後5~10年で、バイオマス発電が成立しなくなる可能性も否めない状況です。
発電コストの高さ
バイオマス発電は、再生可能エネルギーのなかで唯一燃料の調達にコストがかかります。資源の購入費用や資源を木材チップなどに加工する費用、燃料の運搬費用などが高くつく点が、バイオマス発電の普及を妨げています。
また、発電コストの削減が進まないままFIT(固定価格買取制度)による調達期間や調達価格での買い取りが終了する点も、新規参入検討事業者を躊躇させている理由となっています。
参考:持続可能な木質バイオマス発電について|資源エネルギー庁
バイオマス発電所が小規模分散型設備になりやすい
バイオマス発電の資源は広い地域に分散しているため、小規模分散型設備になりやすいのも課題のひとつです。資源収集場の近くに大きな発電所を建設する場の確保が難しいため収集や運搬、管理にコストがかかり、バイオマス発電普及を遅らせています。
輸出入・輸送でCO2を排出する
バイオマス発電で木材を燃料にした際に排出される二酸化炭素は、新たに成長する樹木の光合成によって吸収されるためカーボンニュートラルになるとされているものの、木質ペレットの製造や輸入・輸送などが多量のCO2を発生させることを考えると、必ずしもカーボンニュートラルとは言えないとの指摘もあります。木材を利用したバイオマス発電は、世界的にも地球に対する影響が懸念されています。
産業廃棄物を最終処分しなければならない
バイオマス発電は廃棄される資源を再利用していますが、木を燃やす過程のなかで燃え殻やばいじんなどの産業廃棄物が出ます。多くは最終処分されており、中間処分地はまだまだ少ないという現状です。また、最終処分は持続可能性が低いためコストが割高となる上、依頼側で価格を決定できないデメリットもあります。
北海サンド工業は、北海道苫小牧市で通常最終処分場に回す燃え殻・ばいじんを再利用することで、こうした課題を解決しています。
まとめ
バイオマス発電は、2050年に脱酸素社会の実現を目指すために必要とされている再生可能エネルギーのひとつです。木材などの資源や産廃物などを燃料として発電する仕組みなので、循環型社会の構築や地域活性化、廃棄物量の削減などが実現します。エコの観点からも注目が集まっているバイオマス発電ですが、燃料の枯渇やコストの高さなどさまざまな課題があり、国内ではまだまだ普及していません。
北海道で最初に鉱さいの中間処理の許可を取った北海サンド工業は、バイオマス発電で木を燃やす過程で出る燃え殻やばいじんなどの産業廃棄物のリサイクルに積極的に取り組んでおり、産廃物の減容化に努めています。産廃物処理の豊富な知識や実績により、バイオマス発電に取り組んでいるお客様が抱えている問題の解決や、これから取り組もうとしているお客様のお悩みをサポートします。
バイオマス発電でお困りなら、北海サンド工業にぜひご相談ください。