廃棄物処理法では、廃棄物を適正に処理するために、排出事業者が廃棄物に関する情報を提供することを定めています。
そのため、環境省では廃棄物データシート(WDS:Waste Data Sheet)という書類による情報提供を推奨しています。この記事では、廃棄物データシートをどのように作成すればよいのか、また廃棄物の情報提供の重要性について解説します。
廃棄物データシート(WDS)の基礎知識
産業廃棄物を処分する際は、排出事業者は適正処理のために、書面で必要な情報を明記すると定められており、環境省ではこの情報を明記するのに「廃棄物データシート(WDS)」の使用を推奨しています。
ここでは、廃棄物データシート(WDS)の基礎知識について解説します。
廃棄物データシート(WDS)とは
廃棄物データシート(WDS)は、産業廃棄物を出した事業者(以下、排出事業者)が処分業者に提供すべき情報を記載するために作成されたテンプレートです。
このシートは産業廃棄物の情報を詳しく記載するために、情報を補完する目的で使用されます。ただし、提出・添付は義務ではなく、あくまでも推奨されているのみです。
廃棄物データシート(WDS)の記載内容
排出事業者と処分業者が情報共有する、廃棄物情報として必要な項目は廃棄物の名称や性状など17項目あります。
また、WDSの書式は環境省が公開していますが、法で定められる必要事項が記載されていれば、書式は任意形式で作成可能です。
法で定められる主な必要事項
- 産業廃棄物の性状や荷姿
- 他の廃棄物と混合することで生じる支障
- 化学物質含有マークの表示に関する事項
- 石綿含有産業廃棄物の有無
廃棄物データシート(WDS)の提供が必要な廃棄物
「廃棄物情報の提供に関するガイドライン」では、見た目などからではわかりにくい含有廃棄物や有害特性4品目を主な適用対象としています。
含有廃棄物や有害特性が判りにくい4品目
- 汚泥
- 廃油
- 廃酸
- 廃アルカリ
また、上記以外にも環境保全上の支障がある可能性が考えられる物質も適用対象となります。
廃棄物データシート(WDS)を渡すタイミング
基本的に廃棄物データシートは廃棄物処分委託契約書に添付して提出します。
契約前に処分業者と情報を共有し、双方が確認・署名した上で契約書に添付し提出することが望ましいでしょう。
廃棄物データシート(WDS)提供が求められる産業廃棄物の種類
環境省から発表されているガイドラインでは、以下の品目が提出すべき産業廃棄物とされています。
WDSを提出すべき品目
- 汚泥
- 廃油
- 廃酸
- 廃アルカリ
廃棄物データシート(WDS)を提供する必要性
廃棄物を安全に処理するためには、取り扱い上の注意点など処分業者への適切な情報提供が必要です。
この情報提供をおろそかにすると、重大な事故を引き起こす危険性があります。
事故は事前に十分な情報提供があれば防止できるものばかりなので、廃棄物データシートでさらに詳しい情報を提供する必要があります。
廃棄物データシートの記載方法・記入項目
ここでは、廃棄物データシートの記載方法に加え、記入項目について解説します。記入するうえで特に難しい部分についても解説しているので、参考にしてください。
1.廃棄物の名称
ここでの名称は、法律上の表記にこだわらず、具体的な名称・呼び名を記載します。
表記の一例
品目 | 廃棄物の名称(例) |
---|---|
廃アルカリ | 「廃ソーダ液」「金属せっけん廃液」「廃現像液 などのアルカリ性の廃液」等 |
燃え殻 | 「石炭がら」「焼却炉の残灰」「その他の焼却残さ」等 |
汚泥 | 「ビルピット汚泥」「カーバイトかす」「洗車場汚泥」「建設汚泥」等 |
廃油 | 「鉱物性油」「動植物性油脂」「廃潤滑油」「絶縁油」「廃切削油」「廃溶剤類」等 |
廃酸 | 「廃硫酸」「廃塩酸」「廃定着液などの酸性の廃液」等 |
廃プラスチック類 | 「ビニールくず」「発泡スチロールくず」「合成ゴムくず」「廃タイヤ」等 |
ゴムくず | 「天然ゴムくず」など |
金属くず | 「研磨くず」「切削くず」「空缶」「金属スクラップ」等 |
鉱さい | 「廃サンドブラスト」「高炉・電気炉等の溶解炉かす」「ボタ」「スラグ」「ノロ」「廃鋳物砂」「不良鉱石」等 |
がれき類 | 「工作物の新築・改築等で発生したコンクリート破片」「アスファルトくず」等 |
ばいじん(煤塵) | 「ばい煙発生施設等で発生するばいじんで集じん施設で集められたもの」等 |
法律上の名称で表記するのではなく、お互いが具体的にイメージできる名称が望ましいです。
2.廃棄物の組成・成分情報
この項目では廃棄物の組成・成分について、発生工程等を考慮しながら混合比率の高いと思われる順に記載します。
<表記の一例>
- 水:40~55%
- 苛性ソーダ(NaOH):40~50%
- グリセリン:5~10%
3.廃棄物の種類
この項目では、法律上の区分に従って、産業廃棄物か特別管理産業廃棄物かをレ点でチェックし、さらに詳細な品目もチェックします。
産業廃棄物の種類
- 燃えがら
- 汚泥
- 廃油
- 廃酸
- 廃アルカリ
- 廃プラスチック類
- ゴムくず
- 金属くず
- ガラス・コンクリート・陶磁器くず
- 鉱さい
- がれき類
- ばいじん
- 紙くず
- 木くず
- 繊維くず
- 動物系固形不要物
- 動植物系残さい
- 動物のふん尿
- 動物の死体
- コンクリート固形化物など
特別管理産業廃棄物の種類
- 廃油
- 廃酸
- 廃アルカリ
- 感染性産業廃棄物
- 廃PCB等
- PCB汚染物
- PCB処理物
- 廃水銀等※1 ※2
- 指定下水汚泥※1
- 鉱さい
- 廃石綿等
- ばいじん又は燃え殻※2
- 廃油※1 ※2
- 汚泥、廃酸又は廃アルカリ※2
※1 処分するために処理したもので、省令に定める基準に適合しないものを含む
※2 特定施設において生じたもの
4.特定有害物質
この項目では、法律上の埋立基準が設定されている有害物質について、含まれているかどうかの有無を記載します。
5.PRTR対象物質
PRTRとは、人や生態系に有害な化学物質を排出する事業者が、その排出量や移動量を公表する制度のことです。ここでは、排出事業場がPRTR法の届出対象事業場であるかどうかを記載します。
加えて、第一種特定化学物質を含有する場合は、具体的な物質名も記載します。
6.水道水源における消毒副生成物前駆物質
この項目では、浄水場の機能を妨げる8物質が列挙されているので、該当する場合はレ点チェックをします。
該当する8物質
- ヘキサメチレンテトラミン(HMT)
- 1,1-ジメチルヒドラジン(DMH)
- N,N-ジメチルアニリン(DMAN)
- トリメチルアミン(TMA)
- テトラメチルエチレンジアミン(TMED)
- N,N-ジメチルエチルアミン(DMEA)
- ジメチルアミノエタノール(DMAE)
- 1,1-ジメチルグアニジン(DMGu)
7.その他含有物
この項目は、上記以外の廃棄物処理時・処理後に問題となる代表的な物質が明記されています。
分析表添付で省略できますが、組成・成分が分かる分析が別途必要になります。
8.有害特性
この項目では、爆発性や急性毒性などの処理過程で発生する問題特性が列挙されています。
主な有害特性
- 爆発性
- 感染性
- 引火性
- 可燃性
- 参加性
- 毒性
- 腐食性
- 重合反応性
有害特性が不明な場合は、「不明」を選択し、それを持って処分業者と今後の対応について協議しましょう。
9.廃棄物の物理的・化学的性質
この項目では、廃棄物の物質的・科学的な性質を示す項目を分かる範囲で記載します。
主な廃棄物の物質的・化学的性質
- 形状
- 臭い
- 色
- 比重
- pH
- 沸点
- 融点
- 発熱量
- 粘度
- 含水率
適正な処理に必要と考えられる項目を埋めていきましょう。
10.品質安定性
この項目では、廃棄物の性質が時間経過で変化する場合、処理過程で問題となる可能性があるものを記入します。
時間経過で変化する項目
- 腐敗
- 揮発
- 化学反応等の変化
有の場合は「有」を選択し、どのような変化が起こるのか、何が原因で変化をするのかを記載しましょう。
11.関連法規
稀に、廃棄対象の廃棄物が廃棄物処理法以外の規制対象となる場合があります。この項目では、危険物取扱者など、関連する資格と法規の内容が明記されているので、当てはまるものを記入しましょう。
関連する資格と関連法規の正式名称
- 危険物取扱者(消防法)
- 特定化学物質等作業主任者(労働安全衛生法)
- 有機溶剤作業主任者(労働安全衛生法)
- 毒物劇物取扱責任者(毒物及び劇物取締法)
- 悪臭防止法
12.特別注意事項
この項目では、取り扱う際に必要と考えられる注意事項を記載します。
廃棄物の処理を進める上で特に注意すべき事項がある場合、その内容や推奨する処理方法などについて記載しましょう。
種類別処分・再生方法の一例
- 廃油:焼却、蒸留設備で再生
- 廃酸・廃アルカリ:中和、焼却、イオン交換設備等で再生
- 感染性:焼却、溶融、高圧蒸気滅菌、肝炎ウイルスに有効な消毒、他法令に基づく方法
- PCB等:焼却、分解、洗浄
- 廃石綿等:溶融
13.その他の情報
その他となってはいますが、ここではサンプル提供の有無と、サンプル採取の特性等について該当する項目を記載する必要があります。
サンプル採取の特性
- 均一サンプル
- 不均一サンプル
- サンプルの一部分
さらに廃棄物の発生工程について、産業廃棄物の製造工程や排出場所、原材料や副産物など、できる限り詳細に記載するようにしましょう。
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産業廃棄物の排出事業者は、廃棄物の適正処理のために必要な廃棄物情報を処理業者に提供しなくてはなりません。
しかし、情報が十分に提供されないため、、廃棄物の処理過程において自然発火や化学反応等による事故が発生したり、有害物質等が混入等してしまうといった事態が生じています。
廃棄物の処理過程における事故等を未然に防止し、環境上適正な処理を確保するためにも、データシート作成時は抜け漏れや誤りなどの無いように慎重に正確に記入しましょう。
まとめ
廃棄物処理法では、廃棄物の適正な処理を行うためにも廃棄物データシートの活用を推奨しています。
廃棄物データシートの活用は義務ではありませんが、排出される廃棄物のことをもっとも理解しているのは排出事業者です。安全な処理を行うためにも廃棄物データシートの活用は望ましいです。加えて、産業廃棄物を処分する際は、許可を得た専門の処分業者に依頼しましょう。
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