高速道路は、開通から30年を超える道路が約4割を占めており、近年では老朽化が広く進んでいるとされています。経済成長や暮らしを支え続けてきた高速道路は、早急に老朽化対策をとらなければなりません。本記事では、高速道路(公共インフラ)の老朽化問題の概要に加え、現状とられている対策まで解説します。
高速道路(公共インフラ)の老朽化とは
高速道路(公共インフラ)の老朽化は、開通から30年近く経った現代において深刻な社会問題として取り上げられています。ここでは、高速道路(公共インフラ)の老朽化問題について解説します。
老朽化が注目される背景
高速道路の老朽化が問題視されるようになった原因は、2012年12月2日の中央高速道笹子トンネル(山梨県)で発生した天井板の落下事故です。また直近では、2021年10月に和歌山市で発生した水道管を渡す水管橋の崩落事故も起きています。
いずれの事故も老朽化が原因と結論付けられましたが、直前の点検では異常が見つけられていません。このような事故もあり、高速道路の老朽化は早急に解決すべき事案として取り上げられています。
老朽化問題の現状
高速道路以外にも、インフラ設備は例外なく老朽化問題を抱えています。道路橋、河川管理施設(水門等)、港湾岸壁については2033年までに約6割が築50年以上となります。そのため、およそほとんどのインフラ設備において、老朽化問題は内在していると考えられます。
そのような現状もあり、国土交通省は13年をメンテナンス元年と位置づけて道路法を改正、すべての橋梁・トンネルに対して5年に一度定期点検を実施すると定めました。
しかし、地方自治体の状況をみると18年度末時点では橋梁の長寿命化修繕計画を策定していない自治体が約2割もあり、村のうち半分以上は土木技術者が1人もいないという現状があります。
老朽化問題の原因
高速道路をはじめとするインフラ設備老朽化問題の根本要因には、以下のものがあるとされています。
高速道路(公共インフラ)老朽化問題の原因・要因
- 技術力不足
- 経年劣化
- 資材不足
- 人材不足
建設業界の人材は不足しており、2018年度(平成30年度)は2017年度と比較して、2万人ほど減少しています。加えて、働き方改革導入による減少分も考慮すると、インフラの適切な維持のためには2023年までに18万人ほどの人材の確保が必要となる計算です。
2023年までに21万人の人材確保が必要とされていますが、現状この数字には到達することは難しいでしょう。
高速道路(公共インフラ)の老朽化に対する課題
高速道路(公共インフラ)の老朽化問題は広く提言されていますが、その解決を行うためにはいくつかの課題があるとされています。ここでは、高速道路(公共インフラ)の老朽化問題が抱えている課題について解説します。
制度上の課題
高速道路をはじめ、老朽化インフラの予防保全を行うことで、事後保全の場合と比べて費用負担が3割削減できるとされています。
しかし、上記で解説した高速道路の崩落事故をはじめ、インフラ設備の老朽化は事前点検では発覚しない可能性があります。そのため、見かけ上は健全なインフラ保全費用の支出を住民から理解を得ることは難しいでしょう。
住民の意識を高めるためには積極的な情報発信や呼びかけが重要となりますが、それらを行うための制度上の課題があり定量的な修繕へは至っていません。
技術上の課題
内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」によると、14〜18年度の間、「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」というテーマで研究開発が実施されました。
該当発表には従来の土木の枠組みを超えてさまざまな企業が参加しましたが、ほとんどの技術が維持管理負担の軽減に主眼を置いていました。
維持管理の本来の目的である事故災害リスクの低減を目指したものは少なく、このことから、インフラ保全を行う技術者の不足・技術力不足も問題視されています。
高速道路(公共インフラ)老朽化に対する対策
高速道路(公共インフラ)の老朽化はさまざまな問題と課題を抱えていますが、経済や暮らしを支えるためにもさまざまな取り組みが行われています。ここでは、高速道路(公共インフラ)老朽化に対して、今現在行われている対策を解説します。
長寿命化計画
高速道路(公共インフラ)の老朽化対策としてまずおこなわれていることは、「インフラ長寿命化計画」です。
インフラ長寿命化計画は、国土交通省が2014年5月にとりまとめた行動計画です。計画内では、将来にわたりインフラを維持するための継続的な取り組みについて取りまとめられています。
2021年6月には第2次のインフラ長寿命化計画が策定されており、定期的に定量的な見直しをできるような取り組みは長く続けられています。
インフラメンテナンス国民会議
「インフラメンテナンス国民会議」は、以下の5つを目的として、各団体の連携を促すプラットフォームです。
インフラメンテナンス国際会議の目的
- 革新的技術の発掘と社会実装
- 企業などの連携の促進
- 地方自治体への支援
- インフラメンテナンスの理念の普及
- インフラメンテナンスへの市民参画の推進
各種フォーラムやシンポジウムなどを開催し、インフラメンテナンスに取り組む機運を高めるための活動をサポートしています。
インフラDX 総合推進室の発足
「インフラDX 総合推進室」は、2021年4月に国土交通省が発足させたインフラDXのための体制です。国土交通省・国総研などの研究所・整備局などが一体となり下記のような取り組みを行います。
インフラDX総合推進室の取り組み
- 環境や実験フィールドの整備
- 新技術の開発
- 導入促進
- 人材育成
かつては政府主体のみで取り組まれていた老朽化問題ですが、近年では民間の先端技術を取り入れる取り組みなど、広く技術革新につなげるために進められています。
メンテナンスの効率化
近年取り組まれている対策として、デジタルツインのような最新技術を活用したメンテナンスの効率化も進められています。
経済成長が低い水準で低迷している日本国内において、多くの人員や予算を確保することは困難です。そのため、低コストで質の高い保全が実現できる最新技術に注目が集まるようになりました。
最新技術を使ったメンテナンスは従来の方法と比べて生産性が高く、限られた予算で多くのインフラを長寿命化させていくために有効な方法といえるでしょう。
高速道路の老朽化対策には産業廃棄物の「鉱さい」が発生する
高速道路の事故防止のためには、定期的なメンテナンスが必要です。そのため、調査・修繕のため構造物を綺麗にする際にサンドブラストが研削材として多く用いられます。
しかし、使用済みのブラスト材(廃ブラスト)は、産業廃棄物の品目「鉱さい」として処理しなければなりません。その際は、鉱さい処分業の許可を持った業者に処分を委託し、適切に処理する必要があります。北海サンド工業ではそのような鉱さい(廃ブラスト材)を中間処分した上でリサイクルしていますが、なかにはそれらを行わない事業者も少なくありません。ここでは、高速道路メンテナンス時に発生する鉱さいの処理方法に加え、リサイクル処理について解説します。
ブラストや鉱さいの処理方法については下記の記事も参考にしてください。
※関連記事:ブラストとは|特徴や用途、メリット・デメリット、残留物の処理方法まで徹底解説
※関連記事:鉱さいとは?種類やリサイクル方法、処分費用の目安も解説
鉱さいの処理方法
高速道路メンテナンスで発生した鉱さいは、一般的に管理型最終処分場で処分を行います。ただし、有害物質が含まれると考えられる場合は、遮断型最終処分場で処分する必要があります。しかし、鉱さいはリサイクル可能な廃棄物とされているため、処理を行う際はリサイクルを念頭に置くと良いでしょう。
鉱さいはリサイクル処理も可能
鉱さいは、さまざまな用途に応じてリサイクルすることが可能です。
鉱さいのリサイクル手段
- 鋳物砂
- 再生サンドブラスト材
- セメントの原料
- 路盤材・再生骨材
- 肥料
一概に廃棄物として処理を行うのではなく、リサイクルを念頭に入れることで環境の保全にもつながります。
また、リサイクルによって生まれた資材は、高速道路をはじめとするインフラメンテナンスにも使用されます。老朽化問題を解決する1つの要素としても、リサイクル処理は重要です。
まとめ
高速道路(公共インフラ)の老朽化問題には、さまざまな課題が内包されています。そのなかには、コスト面における資材不足なども挙げられます。定期的なメンテナンスを可能にするためにも、メンテナンス時に発生する廃ブラスト(鉱さい)はリサイクルによる処理を行いましょう。
北海サンド工業では、鉱さいをはじめ、通常は埋め立てになってしまうような、燃え殻・ばいじん・汚泥のリサイクルも可能です。北海道で最初に鉱さいの中間処理の許可を取ったこともあり、多くの事業者様から信頼をいただいています。
加えて、汚泥のリサイクル・建設発生土の受入もしており、汚泥も建設発生土も「改良土」として各土木・建設資材として有効利用に努めています。廃棄物処理・リサイクル方法などでお困りの場合は、ぜひ北海サンド工業にご相談ください。